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ルイス・カーンの建築を訪ねて

一昨年の年末、ニューヨーク滞在とルイス・カーンの建築を巡るためアメリカを訪れました。前半はニューヨークの美術館や近郊都市を訪れました。クリスマスイブの朝、谷口吉生設計のMOMAへ。エントランスはたくさんの人を収容できるよう、レセプションはとても広くとってありました。館内でのランチをはさみ展示を楽しみました。

グッゲンハイム美術館は思っていたよりずっとコンパクトでよいスケール感の建築でした。こちらも人でいっぱいでとても賑やか。スロープになった回廊をおりながらモダンアートを楽しみました。

クライスラービルはサッシュのフレームが赤茶色、グリーンがかったガラスの色合いがとても上品でした。

 

 

ニューヨーク滞在最終日、電車で2時間ほど北のニューヘブンへ。ルイス・カーン初期の作品、ブリティッシュ・アートギャラリーと、道を挟み建てられた晩年の作品、英国美術研究センターを訪れました。英国美術研究センターは、今回の旅行の中で最も印象に残りました。

向かいのアートギャラリーのテラスから見えるセンターのトップライト。

 

グリッド状に屋根に設けられたトップライトが、室内に得も言われぬ光を落としていました。が、写真を殆ど撮らなかったため、イエール大学から出版されているカーンYCBA、Louis I. Kahn in the realm of architectureという書籍の写真を少しだけ。

低い天井の入口を入ると平面は均質なグリッド状に配置され、部屋の広狭はグリッドをいくつつかったかによっています。エントランスホールの吹き抜けは、トップライトから透過した光で神々しいまでに包まれ、自然と人が集まる場となっています。柱・梁・壁、サッシュ、設備配管、照明用のトラック、スクリーンボックス。構成要素はすべてルールに沿いシステマティックに配置されています。抑圧された空間と解放された空間、天候により刻一刻と変化する光が落ちる静かな空間に心を打たれました。もっと滞在時間を長く取っておけばよかったと後悔しました。

ニューヨークをあとにして、テキサス州フォートワースにあるキンベル美術館を訪れました。「まるで友人が邸宅を訪れたかのように絵画に親しんでもらいたい」というオーナーの想いのもと建てられた私設美術館です。1階のエントランスでスーツを着た背の高い男性が二人、あたかも邸宅にゲストを迎えるように、迎えてくれます。午前中から、多くの来館者でにぎわっていました。

 

エントランスホールの左手にオフィス、正面に化粧室があります。化粧室が混んでいたところ、オフィス内の化粧室をご案内頂きました。その機転にも感動しましたが、普段一般の人が入れない化粧室がとても丁寧に作られきれいに使われていることにも深く感銘を受けました。

二階への階段を上がると、広々としたショップ空間、展示、カフェ、中庭があります。展示空間の一角にはリーズナブルでとってもおいしいスープとサラダのランチが頂けます。展示空間と一体になっているので利用しやすやもピカイチです。

 

企画展でなければ無料。写真も自由。2日にわたり訪れましたが、いつも来館者がたくさんおり、アートに触れたり、家族で食事を楽しんだりみな思い思いに幸せそうな時間を過ごしており、奇跡のような美術館でした。

キンベル美術館のあと、飛行機でロサンゼルスへ。レンタカーで片道160km南下し、ソーク研究所のあるラホヤを訪れました。ラホヤはメキシコ国境に近いリゾートです。中央に広場があり、その両側にスタディー棟(個室と階段・コートヤードを見下ろすポーチを一ユニットとして)が、窓から海が見える角度で5つずつ並んでいます。スタディー棟のうしろにスタディー棟とレベルを変え、距離を持たせて配置されたラボラトリー棟があります。

今回の旅で、カーンの良さや考え方にじかに触れることが出来ました。機会がありましたら、住宅をはじめほかの建築も見に訪れたいと思います。