私が土地探しに行き詰まったとき、一個人の、一人称で語られるサイトを見つけられなかった経験から、住まいを建てる土地を探している方の参考にしていただけたらと、自身の土地探しについてまとめてみました。
具体的には地元ではない場所に嫁いだ妻であり、母であり、建築士の私自身が不動産屋さんやハウスメーカーさんとは少し離れた視点から、等身大の自分たちのくらしを支えてくれる、良いところも悪いところもすべて受け止められる土地を見つける過程をつづっています。良い土地に関しての一般的な情報もありますので参考にしていただけたらと思います。
こんな方におすすめです。 |
・夫婦間で意見の食い違いや温度差がある。 ・理想と現実がかけ離れている。 ・頑張りすぎて疲れてしまった。 ・迷路の出口が分からない。 ・土地勘がなく不安 |
目次
1. 答えはいつも自分のなかに。これまでの住体験をふりかえる
2. 土地の良し悪し 見分け方
3. 優先順位をつけてみましょう
4. 土地が市場に出るまでの流れ
5. 一人称の土地探し
6. 運命の土地と出会ってから、人は少し考える!?
7. 地盤調査の大切さ
8. 建てる会社を決めておく
1. 答えはいつも自分のなかに。これまでの住体験をふりかえる
引っ越しや、おばあちゃんの家など、あなたがこれまで重ねてきた時間のなかで自然と家に対する「記憶」や「感覚」がはぐくまれていることと思います。幼いころ兄弟で縁側で遊んだ記憶や、ぼんやりとうたたねをした畳の部屋やそこに差し込む光・・・。
これまであたながくらした住まいがどういうところに、どういう風に建っていて、あなたはそこでどんな時間を過ごしていたでしょうか。その場所は広かったのか、窮屈だったのか。家の素敵な画像を集めることも家づくりの楽しみのひとつですが、それとおなじくらい、あなたと住まいの歴史を振りかえり整理しておくことは、人の意見に左右されることなく自分がよいと思えることや、絶対嫌なことや譲れないポイントを見つける上で大切なことだと思います。
また、これくらいの土地にこれくらいのものが入る、という判断のよりどころとして、自身に刻まれた記憶ほどたよりになるものはないように思います。私自身が家を建てるまでに体験した主な住まいを分類してみました。
1.子供の頃過ごした一軒家 2件
2.大学~結婚するまでの賃貸 5件+結婚後家を建てるまでに住んだ賃貸1件
3.おばあちゃんの家 2件
2.賃貸は自分で選んでいるため、転居を重ねるごとに住まいに求めるものがはっきりしてきました。私が大切にしていたのは
・2階以上であること
・緑が十分に見えて風通しがよく気持ち良い場所であること
・収納量
・2口以上のガス式コンロ
です。そのほかセキュリティを大切にされる方も多いのではないでしょうか。
結婚して家を建てるまでの9年ほどくらした住まいはこのような間取りでした。子供が小学校に上がるタイミングにあわせて家ができるよう、土地探しをはじめました。
2. 土地の良し悪し 見分け方
不動産サイトに載っている土地の資料を請求すると、こういうものが送られてくると思います。
「日当たり良好!」、「買い物に便利!」などのアピールに加え、備考欄などに書かれているその土地の特長について理解しておきましょう。不利な点は何か、それが自分たちにとって問題のない内容かを、現地を見たり、不動産屋さんに聞くなどして見極め、判断していくことを繰り返します。良い面も悪い面もわかったうえで選ぶことで、購入後なにかあったとしても冷静に対処できるのではないでしょうか。以下、土地購入時留意すべき一般的な事項をいくつかご紹介します。
地盤の状態と海抜 |
土地の地質・海抜・盛り土および切土・傾斜地の場合その度合いについては、以下の国土地理院のサイトで見ることができます。
海に近いところでは海抜が気になる場合もあるかもしれません。盛り土/切土は丘や山を切り開いた土地で土砂を削って開拓したのが切土、もともとあった地盤(谷や窪んだ土地)に土を埋めたのか盛り土になります。切土より、盛り土の方が地盤が弱いと一般的に考えられています。2021年、熱海伊豆山で起こった土石流災害もありますし、実際に高台の盛土した宅地の中古住宅において、見てわかるほど床が傾斜しているのを見たことがあります。もと田んぼだった場所なども地盤が軟弱なことが多いです。なるべく地盤が良好なところに建てたいものですね。
国土地理院のサイトでは、傾斜は右上の「機能」ツールをクリック、「断面図」をクリックすると、指定した場所の断面が等高線つきで表示されます。ざっくりした図ですが、傾斜地の上や下に建てるとき、傾斜がきつすぎないかを判断をする際、参考に使うことができます。水平面に対し傾斜が30度を超えている場合は崖(硬岩盤以外の土質)とみなされ、敷地内で建築できる場所に制限があったり、柱状改良などの必要が生じる場合があります。
浸水と冠水 |
低地や川の近くでの浸水はもちろんですが、下水整備済の高台でも冠水しやすい場所はあります。雨が降っているとき敷地を見に行く、地域に詳しい人に冠水歴を聞いてみるなどで確認するのもひとつです。
都市計画・風致地区など |
土地の資料に掲載されていることがほとんどですが、各市町村のサイトから自分で調べることもできます。敷地面積の何割程度の大きさの建物が建てられるか(建ぺい率)、敷地面積に対して何割程度の床面積が建てられるか(容積率)また、「風致地区」とかかれている場合、道路や敷地境界から壁面をセットバックさせる必要があったり、駐車スペースや緑化面積について細かく決められていることもあります。防火地域ですと延焼ラインより外側は仕上に制限があることもあります。分からなければ、遠慮なくあっせんしている不動産屋さんや懇意にしている建築会社などに聞いてみてください。
崖・土砂災害など |
崖上は、原則として崖下端より、崖の高低差×2倍の距離のところまで建物が建てられませんし、崖下では、崖上端より崖高低差×2倍の水平距離のところは建物が建てられません(図1を参照ください)。
また、「がけ条例」や土砂災害防止法、急傾斜地災害防止法などによって「建築物と崖の間に所定の高さの鉄筋コンクリート(RC)擁壁を設ける」「建築物の主要構造部はRC造とする」「建築物の位置は、崖から崖の高さの2倍以上の距離を確保する」など、様々な制約が生じるため、それらの費用を予め見ておく必要があります。
また、既に擁壁がある場合、現行の法的強度を満たしていない場合は擁壁をやりかえるか、決められた一定距離崖から離して建てるか、杭を打つか、などの対処をします。また、崖が隣地に入っている場合、私有地か国有地かによっても、万一崖が崩落したあとの対応が変わってきます。
ここまで述べておきながら申し上げるのもなんですが、崖の上は視界が広がるよいロケーションであることが多く、そういう土地を探していながら神経質になりすぎるのはどうかとは思いますが、知っていて購入するのとそうでないのとでは心構えが変わってくると思います。
地目が宅地かどうか |
大規模既存集落や許可宅地など、売買の際色々な制限がある土地があります。価格設定も安めで、手が伸びやすい土地には何かしら理由があります。農地の場合、農地転用して宅地にできるかどうかなどあっせんする不動産屋さんにきちんと説明を受け、メリット・デメリットを把握したうえでの購入をお勧めします。ただ、大規模既存集落や許可宅地も低予算で広い土地を得られることや、環境がよいなど、メリットもあります。優先順位のなかで考えたらよいかと思います。
ご近所の様子や雰囲気 |
店舗や事業所がある場合は、においや騒音、明るさなど日常生活に支障がないか確認してください。良い土地が見つかったら午前、午後、夜間、平日、休日、雨の日など、何度か通ってみてください。雰囲気が良くわかります。私の例になりますが、検討中の土地の隣や向かいのお住まいの方が、昼も夜も車を路上駐車していたことがありました。現時点で自分が気になることは、住み始めたらさらに気になるはずです。そういった点も確認してみてください。密集地に住む知り合いの中に、「自分が庭に出るたび隣人が出てきて落ち着かない」といった困りごとを抱えている人もいます。長い付き合いになりますので、購入前に挨拶がてら、土地のことや地域のことを教えていただくかたちで訪問してみて、どんな人か知っておくことができれば安心です。そんななかで意外な話を聞けることもあります。私は購入しようと考えていた土地の隣の方に、偶然子供が同じ年だったり、生活の時間帯や地盤の固さなど、色々教えていただくことができました。また、将来的に周辺が変わっていきそうであれば、想定できる範囲で間取りに反映させておくとよいですね。分譲地に一番先に建てると、それまで住んでいたところを早く退去できるメリットがある一方、周りの家がどういう風なボリュームや開口部ができるかわからないというデメリットもあります。せっかくリビングに大きな窓をつくってもお隣の玄関と対面する位置では台無しになってしまいます。商業地域などでまわりに大きな建物が建つ可能性が高いなど、可能性として知っておくことも必要のように思います。
敷地の形状 |
一般的には四角形がよいと言われていますが、変形敷地でも庭に奥行きを出すことができたり、効率的に建物を建てられるなどよいこともあります。選択肢を狭めすぎないことで思いがけない魅力的な土地がみつかることもあるかもしれませんね。
私道の有無 |
私道のある旗竿敷地には魅力的な例がたくさんあります。たとえば建築家 永田昌民さんの魅力的な小径の先の自邸など。占有の私道であれば、緑溢れる小径にしたり、駐車スペースに充てたり、土地の一部として好きなように扱える利点があります。一方、数世帯で共有する私道で既に住んでいる方がいる場合、どういう人達か確認した方が安心です。この場合も、土地のことや地域のことを教えていただくかたちで訪問するのが自然です。また私道を共有する場合、図2のように私道の延長上に駐車スペースを確保する必要があります。
建物が建つ場所が必然的に限られてくることも、留意しておいた方が良いかと思います。私道にあるガス管や水道管の工事・メンテナンス費は私道所有者の負担になります。そういったことから私道つき宅地は、坪単価も魅力的なケースが多いです。
前面道路の幅 |
前面道路の幅が4m未満の場合、道路中心線から2mのところまでは塀や門、建物を建てることができません。また、実際のところ車の出し入れを考えると幅員4mの道路は狭いものです。
敷地面積が十分広いならよいですが、そうでないと駐車スペースに加え、車の切り返しのためのスペースが必要だったり、思いのほか住居を建てられるスペースが狭くなることもあります。ご自分で判断が難しい場合は、建築会社に相談してラフプランを作ってもらうことをお勧めします。敷地面積に余裕がなさそうな場合には、前面道路の幅は5、6mあったほうが良いと思います。
通勤・通学・利便性 |
小さいお子様が万一事故に遭うのは心配ですし、お勤めの時間帯など諸事情は人それぞれなので一概には言えませんが、通学路が決まっているのは、幼稚園(保育園)、小・中学校の間だけ。言ってしまえば10数年のことです。ですので、それ以上に長く続く夫婦のくらしも熟慮する必要があります。例えば通勤の利便性、よく利用する交通機関や頻繁に訪れる場所(郵便局、銀行、スーパー、ドラッグストア、コンビニや書店、図書館、役所、駅等)が近いかどうかは、通学の距離以上に大切かと思います。
境界がはっきりしているか |
敷地境界には境界がわかるよう、杭や鋲が打たれています。けれど、田舎などで線引きがあいまいなケースもあり、杭が塀の下に隠れていたり、そもそも存在しないような場合もあります。境界があいまいですと、決める必要があります。その場合、隣人の立ち合いが必要だったり、土地購入の際、土地家屋調査士立ち合いのもと、再度測量をおこないます。その土地がこれまでどういう歴史をたどった(誰の手から誰の手に渡ってきた)かや抵当権については、法務局に謄本(全部事項証明書)を発行してもらうことで、知ることができます。おなじく法務局には測量図(地積図)も置いてあり、境界が鋲か杭かなどの区分が記載されています。これらの資料は土地購入時、不動産屋さんが用意してくれますが、個人で調べたい場合、手数料それぞれ600円と450円程度でだれでも取得できます。また、もともとクリーニング店や自動車整備工場の跡地ですと、土壌汚染の可能性が考えられます。
道路は北側?南側? |
一般的には、南と東面が道路に接する土地が最も良いとされています。南面道路の場合、1階にも十分太陽光が入り、明るい一方、道路に面しますので木塀などで目隠しをしても、なんとなく人目が気になるというデメリットがあります。北側、南側が隣家の場合は、一階への日照はプランの工夫次第な一方、プライバシーを守った暮らしができることが利点になります。色々な経験を振りかえりながら、是非土地探しの選択肢をあまり狭めすぎないようにしていただけたらと思います。
3. 優先順位をつけてみましょう
探す土地に求めることの優先順位をつけてみましょう。私の場合は土地(2台の駐車スペース含む)探し当初の優先順位は下のようになりました。
当初の優先順位 |
1.緑豊かなところ 2.海抜(がけ地 盛り土地をのぞく) 3.値段 4.主人の勤務先から近いこと 5.利便性 駅やスーパー・公共施設からの距離 6.南面道路の土地があまり好きではない。 できれば北側エントランスで南側は人目を気にせず開放的に暮らしたい。 7.学校までの距離 |
最終的に土地を決めたときの優先順位はこちら。色々な土地を見ることで、順番が変わっています。
土地購入時の優先順位 |
1.海抜(がけ地・盛り土地をのぞく) 2.主人の勤務先から近いこと(もともと4) 3.値段 4.利便性 駅やスーパー・公共施設からの距離(もともと5) 5.北側エントランス 6.近所づきあい 7.学校までの距離 8.雰囲気・緑があること(もともと1) |
最終的に土地を決めたときの優先順位はこちら。色々な土地を見ることで、順番が変わっています。
地域に詳しい夫にも、気になる土地は必ず足を運んでもらい、意見を聞いていました。そうすることで、ただ家の中で聞くだけでは「どこでもいいよ」となりがちな夫が気にしている点を知ることができました。
夫は
夫の優先順位 |
・前面道路の広さや敷地の雰囲気 ・人が集まるときのために、車を停められる場所が近くにあること ・通勤距離 ・丘の上の住まい・散歩できる緑豊かなところ |
などが気になるようでした。
4. 土地が市場に出るまでの流れ
さて、優先順位を整理したところで、
「優先順位+良い土地=購入すべき土地」
を見つけるべく土地探しを開始しました。
私たちの場合、義実家の隣のスペースに家を建てられるよう空けてくれていたのですが、その土地は私道を通らないと行くことができず、母屋の「離れ」として建てることのみOKの土地でした。「離れ」とは、水回りである浴室・WC・キッチンどれかが無いという状態の建物のことです。土地面積も150m2程度、南側の前面道路は人さまの私道で2.5mくらい。そこを通らせてもらってはじめて自分の家に入れる、という結構ハードルが高い土地でしたので、
「やっぱり自分たちで探して買うしかないね」というところからスタートしました。
土地購入にあたり、多くの方が利用するのが不動産サイトですね。私は「アットホーム」のサイトで、予算、地域(最初は比較的広め)などを選択し、中古住宅と土地情報の新着メールが届く設定をして、少しでも気になったら資料請求して見に行くことにしていました。アットホームは、色々な不動産会社の情報を網羅していて、写真も充実していてお勧めです。ところで、不動産サイトに掲載されているのはどういう土地か皆さんご存知でしょうか。不動産屋さんは、同業者のネットワークでつながっています。土地が出ると、業者のみ見ることができるサイトやつながりの中で、ハウスメーカーなどが顧客に土地を紹介、購入したりします。私たちが見ているサイトに土地が出てくるのはその後です。悪い土地ばかりではありませんが、不動産サイトに掲載される前に購入が決まることが多いので、よい土地が出にくい時期もあるかと思います。人気の場所でもあくまで冷静に、様々な観点から判断することをお勧めします。費用については家族の将来必要なお金を確認することはもちろんのこと、親からの支援の有無は確認した方がよいと思います。
下の写真は、私が土地探しをしている中で気になる土地の情報を集めたファイルです。
このファイル以外にも、不動産業者さんからメールでお送りいただいたものも含めると、100超える物件に足を運びました。
不動産サイトからの情報に加え、近所の不動産屋さんや、希望する地域の不動産屋さんを数件まわり、入ってきたばかりの情報を提供していただいたこともありました。よく本などに「不動産屋さんに頻繁に通うとよい情報を紹介してくれる」とあるので実践してみたところ、何度も通ううちに「ただの冷やかしのお客さん」とうつるような印象でした。メールでの資料請求にはどこもきちんと対応していただきました。
次に私たちが特に深く検討した土地を順番にご紹介しますね。感じることはご家族ごと違いますので、あくまで参考程度までに。
1.高台団地南面道路の土地
2.高台団地ひな壇宅地
3.絶景土地
4.あこがれの高台土地
5.高台団地の土地(購入)
5. 一人称の土地探し
私たちの土地探しで最もネックになったのは海抜です。夫の勤務先は海抜が低いですが、住むところは高台でと考えており、具体的にはこの地方を襲った安政の東海大地震で津波が来たと想定される範囲外で探していました。実際にいろいろな案件に足を運ぶなかで、海から離れるにつれ利便性や通勤距離に難があることなどが分かってきたため、次第に「隣の学区の高台の団地」に場所を限定して探すようになりました。
実際に土地を決めるまでに5か所ほど、かなり本気で購入を検討した土地がありましたので、それらをどういう風に眺めていたかを書いてみます。
1.高台団地 南面道路の土地 |
土地を探し始めて間もないころ、一件の不動産屋さんから資料が届きました。探していた高台団地の中にあり、南面道路、通学距離問題なし、面積は203m2と申し分ないほぼ正方形の土地で、価格は考えていたより少し高めでした。一見とても魅力的な土地で、すぐに見に行き、切土・盛り土・標高なども調べ、問題なさそうでしたが、夫婦の意見一致で見送りました。理由は3つありました。
1つ目「前面道路幅員が狭いこと」です。
道路の幅は4m未満だったため、道路境界線から敷地内へ12cmのところまでは建築物、門、塀等は建築できないことや、前面道路の幅が狭いため、車の切り返しスペースが敷地の中にも必要だったこと。
2つ目は、郊外のわりに周辺がとても建て込んでいて、すこし息が詰まりそうに感じたことです。
3点目は、私が越してきたばかりで、もう少し土地勘を磨いたり色々な土地を見たいと考えていたためです。父の転勤で山口→名古屋、大学と仕事で京都→東京、女3姉妹の末っ子の私は、親戚づきあいのない家庭で育ち、浜松での地域のお祭りや親戚づきあいの体験は初めてのことばかりでした。市内には昔ながらの習慣が根付く地域もあればそうでもないところもあり、自分にとって住みやすい場所をもう少し見極めたいと考えたのです。
この敷地では、大きくパターン化すると、二階建ての下図のようなボリュームが考えられます。
建て込んだ場所で道路が狭いとあまりいいことはありません。けれどここは人気の高台でしたので、あっという間に土地は売れていきました。
その後、同じ高台団地の中古住宅や少し離れた場所の分譲マンション、勤務先との距離は少し離れるものの、より緑豊かでより便利、津波の心配もない場所などに視野を広げて探している時期がありました。ここで、私が当初より強くこだわっていた「緑豊かなところがよい」点について少しお話しさせてください。
建物を庭・植栽を一体として考えているので、お庭がきちんと確保できたり借景になるような公園や森の近くがいいなぁと考えていました。そういった土地をいくつか見に行きましたがなかなか決められませんでした。環境はいいのだけれど・・・昔から住んでいる人たちの中にポツンと潜り込む勇気がなかったり、JRの駅や主人の勤務先から遠かったり、年を重ねた先々、買い物をどうしようなどと考えてしまうとなかなか購入に踏み切れず。ぐいぐい土地に溶け込んでいけるかどうかは、当事者の人柄や、仕事やプライベートでどのように地域とかかわっていくかなどによると思います。私は土地探しを通して、改めて自身の気の小ささに気づかされるのでした。
2.高台団地 ひな壇宅地 |
そうこうしているうちに、探していた高台団地の北東端あたりに北・東が道路に接している土地が目にとまりました。2番目に候補となった土地です。
東には道路を挟んで緑豊かな湿地があり、開けた土地だけれど少し寂し気、高台の中でもややくぼんだ谷にあたる土地です。敷地面積は283m2と文句なし。南側隣地より2mほど地盤が低く日当たりに若干難があり、価格もだいぶ安くなっていました。私たちは3人で家の延床面積が100m2あれば十分だと考えていましたので、総2階建てとすると一層50m2、駐車場幅2.5m×奥行5m×2台=25㎡とすると、残り200㎡くらいの外部空間を日ごろからメンテナンスしながら暮らしていくのは結構大変だなあと思い、見送ることにしました。車2台停めるとしてもせいぜい180m2あれば十分、200m2超えるのはちょっと・・・必要な敷地の広さを考えはじめたのもこの頃です。ちょうどそのころ、同じ団地の対角あたりにとても素敵な場所を見つけました。その土地は、高台団地のつきあたりで視界が開けており、庭や古い樹木がある広々した土地でした。もし売りに出たとしても、自分にはとうてい手が届かないけれど、大切に住まわれており、こんなところに住めたらいいなぁと、たまに眺めに行ったものでした。
3.絶景土地 |
土地探しが長期化して、モチベーションを維持するすべを見失いかけていた頃、すこし離れたところに、利便性がよく安くて環境が良さそうな素晴らしい景観の売土地を見つけました。手に届きそうなところに桜、ゴルフ場越しに西側に視界が開け、まるで別荘に住んでいるような感覚になります。形もオーソドックスな四角いかたちです。探していた運命の土地がついに現れたかも!?と思いました。
3m低いゴルフ場側の擁壁をいじることは難しいから杭を打とうとか、外壁は絶対木にしよう等と色々イメージを膨らませ、夫もことあるごとにそこから会社までの通勤時間や最短距離を確認していました。しかしながら、時間を置くにつれて気になる面も出てきます。
・夫勤務先から遠い
・小学校まで2キロ離れている
・私道を共有する隣家の車が常習的に私道に駐車されている
・ゴルフ場は農薬など、環境への負荷が大きく、商業のための美しさを借景とすることへの罪悪感
・古い宅地の末端のためインフラの更新がどうなのか
などが気になりはじめ、残念ながらこちらの土地も見送ることにしました。私たちの土地は本当に見つかるのだろうか・・・。とだんだん不安になっていきました。緑豊かな場所というと勤務先から遠くなるから、私たちは最初に考えた隣の学区の高台団地の中で選ばなければならない、そんな風に自分に言い聞かせ、少し暗い気持ちになっていたものです。
その後、子供が産まれ、土地探しをせずに2年ほど過ぎました。3-4年後に控えた子供の小学校への進学を見据え、そろそろまた探し始めるか・・・。と、久しぶりに不動産サイトを丁寧に見始めた矢先、ある土地情報に目が留まりました。
4.あこがれの高台土地 |
主人の勤務地に比較的近いところにある、地価が高めで分譲面積も230m2以上と決まっている地域に、なぜか予算に収まる物件を見つけました。サイトで「お気に入り」登録している人もすでに10人を超えており、これは時間の問題!と、半信半疑ながら、現地を見たあと不動産屋さんへ行きました。果たしてどんな土地だったかというと・・・。
破格の値段だったのである程度予想はしていたものの、「許可宅地」という条件付きの土地でした。けれど土地を見に行った夫が思いのほか乗り気でした。「見つけてくれてありがとう!」と喜んでいます。これまで「自分たちには手の届かない土地」と選択肢にすら入れていなかった、区画割のゆったりした雰囲気のよい土地に住める!と思った瞬間、二人の表情がぱっと明るくなったことも事実です。土地の「くびれ」も、楽しく使えそうです。思い描く生活は楽しいものでしかなく、勢いあまって3間×5.5間の素敵なラフプランも出来上がりました。海抜も30mですから安心ですし、地盤も良好です。しかしながら、次第に冷静にその土地のあら捜しをしている自分がいました。
・図書館が4キロと遠いこと。郵便局やスーパーも欲を言えばやや遠いこと。
・お隣さん(ご挨拶に伺ったところとってもよい方でした)が一件だけで、ほかの世帯が少し離れているため、災害の時など孤立しそうなこと。
・主人の会社から7キロと少し遠いこと。ただでさえ温暖化や環境破壊が叫ばれる中、一日往復14キロ分の燃料の積み重ねに罪悪感を感じること。できれば自分のできる範囲で負荷のかからない暮らしをして次世代にこの崩れかけた環境をつなぎたいと考えていること。
・許可宅地といって、私たちがここで生活できなくなってからでないと売れないこと。
そんなことで、この土地も購入へと踏み切れませんでした。
6. 運命の土地と出会ってから、人は少し考える!?
上の変形土地について色々考えていたころ出てきたのが最終的に購入した土地になります。それは当初から探していた高台団地の西側の一角で、市が管理する寮の跡地を8区画に分譲するというものでした。南側は竹林です。この団地で分譲地が出たのは、探して以来はじめてのことでした。そして、偶然にも以前から「ここに住みたい」と思っていた土地の目と鼻の先でした。
不動産サイトに掲載された段階で、1-8番までの区画のうち、すでに3と5、6は購入者が決まっていました。この土地で一番良いのは、どこでしょうか。6-8番は崖条例に抵触している可能性があるとすると、3番でしょうか。北側の道路に接する敷地は間口9.5m、奥行き18m程度。決して広くもないし、雰囲気もすごくいい!とは言えません。けれどなににもまして主人の会社から近く、何かあったときにすぐに会社に駆け付けられます。また、あとから販売会社から教えていただいたことによると、この地区は市によって整備されたため、一区画がゆったりしているのもよいところです。初めて子供を連れてきたときに、広くて交通量も少ない前面道路を楽しそうに走り回っていたことも決め手の一つでした。団地の裏には畑や小径があり、少し散歩するにもちょうどよいです。
ここと前出の土地でかなり迷いました。値段は少しこちらの方が高いですし、「あこがれの高台」の雰囲気がとてもよく、分譲地が魅力的に見えないのです。
ほぼ同時期、少し手の届かない額で、高台団地東側に南面道路の土地が出てきましたが、たとえ予算が2、3倍あったとしても、変わり者だと言われたとしても、やっぱり南面道路は嫌だと思いました。「八区画の分譲地しかない」と腹を決めました。緑に包まれた団地ではあるもののまさか分譲地を買うとは!一番驚いたのは自分でした。
どの土地を買うか、夫と相談しました。私は1番がいいと思いました。単純に好きな数字ですし西側のお宅も昔からのおちついた日本家屋でよい雰囲気です。それに対し、主人は4番を推しました。1と4はどちらも西側を私道に接した西・北側に開けた土地で、1番は、西側の私道の幅が3mで4番は6mです。4番の方が、より開放的です。
土地が出た日に資料請求、現地確認をして3日後のお昼、不動産屋に買い付け申し込みの電話をしました。私たちが最初だったようです。現地はまだ解体・造成工事中でしたので、2か月後契約、3か月後引き渡しでした。私たちが買い付け申し込みをした後、1~2か月のうちに1、3、7は売れ、残るは8だけです。人は結構慎重に土地購入するものだなぁと思いました。
7. 地盤調査の大切さ
買い付け申込の1か月後、契約前に地盤調査を行いました。結果地盤に大きな問題が無いことを確認して契約をしました。地盤調査とは地盤の種類や支持層がどのくらいの深さかを調べるもので、地盤調査会社に依頼します。木造の住宅の場合、地面に接する部分は一般的にはベタ基礎といって、コンクリ―トを流し固めます。良い地盤であれば、そのまま基礎の工事に取り掛かれますが、軟弱な場合、地盤の上層部を改良する表層改良、支持層まで杭を打つ支持杭基礎や柱状改良など、地盤の状況により改良方法と費用が大きく異なります。場合によっては改良工事に100万単位の費用が必要になりますので地盤調査は大切です。地盤調査会社は建築会社に手配してもらうと良いでしょう。調査自体にかかる費用は、地域や会社によりますが、私が依頼したところは3万円くらいでした。
8. 建てる会社を決めておく
土地購入時からローンを組む場合は、あらかじめ建てる会社を決めておき、土地購入とともにスタートダッシュを一緒にできる会社が必要になります。ローンは金融機関にもよりますが、建築完了までの時期が3か月や1年など、決められているためです。金融機関によって、つなぎ融資を扱っていないところもあります。建築会社は、土地探しを一緒にしてくれたり、自分たちで土地を探した場合でも、ラフプランを描いてくれるようなところの方がスムーズに進みます。私はご紹介した土地すべてにおいてラフプランを作り、そこに建物が建ちそうかどうかを考えていました・・・。
そして、その会社に普段からどういう暮らしをしたいか、家づくりへの想いを伝えておくことも大切だと思いますし、当然ながら、自分たちが叶えたい家づくりをしてくれるところでなければなりませんね。
パートナーとなってくれる建設会社を探す方法は多々あると思います。一番手っ取り早く建てるなら、ハウスメーカーです。土地も紹介してくれますし、工期も短く、ローンもやってくれますが会社規模が大きい故に決まり事が多く融通の利かない場合もあるかと思います。建材を大量・安価に仕入れられるため、建築費用は低いですが、新聞やCMなどの広告費・営業の人件費や管理費が結構大きく、当然、住宅価格にそういった費用が載せられています。
地場工務店も昔ながらの「大工の家」みたいなイメージがあるかもしれませんが、今はデザイン性、施工性共に高いところがたくさんあります。自由度もハウスメーカーより高いと思います。
知り合いや、建築雑誌等で目に留まる設計士がいたら、相談してみるのもいいかもしれませんね。設計士の場合その人が設計する住まいを自分が好きかどうか、断熱性能や耐久性能などに配慮しているか、確認してみてください。
どこにするにしても実際に手掛けた案件を見せてもらい、考えに触れる、想いを伝えることが大切です。最初の相談やプラン提案までは無料のところが多いと思いますので、その会社が何を考えているか、それがあなたの家づくりにおける問題を解決してくれそうか、人(会社)として信頼できそうかといったことも一緒に考えてみてくださいね。また、土地と建物一体でローンを組む場合はローン会社の紹介まで不動産会社が面倒をみてくれるという話も聞きます。大手企業の社員や公務員はローンの審査がおりやすいです。自営業ですと通りにくいこともあります。審査に落ちると自分を否定されたような悲しい気持ちになるものですが、ご自分のお仕事や社会的な価値が低いということでは決してありません。うちは建物のみローンを組みましたが、地方銀行は仮審査で落ち、JA(とぴあ)で借りることができました。私が設計をして夫の会社が施工をするというところに着目して応援してくれたのだと思います。「あるひ」というフラット35を取り扱うローン会社でも仮審査が通ったため、どちらかでと考えていましたが、とぴあの返事が早かったのと、担当の方がよく動いてくださったので、とぴあでローンを組みました。余談ですが土地を購入してから3年以内に住まいを建てると、土地の不動産所得税の軽減措置が受けられます。引渡し後に申請し、我が家は全額戻ってきました。
ここまでお読みいただきありがとうございました。土地探しはエネルギーが要りますが、一生住むことになりますし、未来に残すものなので、いくら慎重になってもなりすぎることはないと思います。ただ、慎重になるあまり、結果、まさか自分が買うとは思わなかった分譲地を買った自分がいます。いかに住みやすい、緑豊かな住まいにしていくかは設計やその後のくらしにかかっていますが、何にせよ、土地探しが終わって次のステップに移ることができるのは嬉しいことです。最後までお読みいただきありがとうございました。読んでいただいたみなさまが、良い土地に巡り合えることを心より願っております。
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