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9坪ハウス

自宅建築の際、日本の代表的な小住宅の模型を作り、そのスケール感を探っていた。

増沢洵さんの「最小限住宅」は、肝心の建物中心部が架構と柱のみで構成され、また繊細な作り込みを要し、ボリューム感をつかむための模型づくりには不向きなようで、その作りが根本的にほかの小住宅と異なるように思われた。

その後、この住宅が展示用に再現され、その後家具デザイナー 小泉誠さんの手により住まいとして再生され、現在は宿泊できるようになっていることを知り、2日間滞在してきた。

第一印象はやはり建坪9坪というだけあって、建物が小さい。

夜到着して玄関を開けた先にあるものすべてが小さくてかわいらしいスケールなのである。

 

正直「ここに短期間でも滞在できるだろうか」という不安がよぎる。

 

キッチンで料理をして食べる。器が色々と気になり、白塗装したシナの台の上に、漆器を出して飾ってみる。

 

翌朝。各場所がそぎ落とされたデザイン。最小限の面積なので、兎に角余計なものが一切ない。

障子と言えば障子であり、手前に道路があるからと、雪見障子を作るということはない。

そして、間仕切り兼用のような建具が、特に1階の和室とダイニングを仕切る建具がとても重要な役割を果たしている。

ここに住むことはそれなりに覚悟が必要で、建築家の意志に自分をあわせて住むような感覚を覚えた。

 

 翌々朝。雨音と風音が家全体を揺らす音で目覚める。まるで家が、皮膚の延長のような感覚を覚える。

なるほど。この家は自分の延長として扱うものなのだと、気づく。自分の延長だと思うと、居心地が悪いはずがない。

直径が120cmのテーブルは食卓としてはやや大きい気もするが、床に置いてしまいそうな色々なものを置くことができ、その絶妙な大きさが、小さな空間を使いやすくしていた。

 

 

 

住宅価格の高騰もあり最小限住宅はぜひ見ておきたかったということもあったが、この住まいのリアリティは自分の延長として家を捉えることにほかならず、そのことに気づくことで初めてこの住まいの魅力を感じ、そして住みたく、住みこなしたくなった。

 初訪問は採寸に終わってしまったため、またゆっくり、絶版本も多く並ぶ書棚の本を読みに訪れたいと思う。